亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
二人がいた部屋は、城の一階にあたる。
窓から身を乗り出し、外に飛び降りれば、直ぐに地面と御対面だった。
新雪で出来た純白の足場は非常に柔らかく、降り立ったと同時に腰ほどまで身体が雪に減り込んだ。
底無し沼と違ってそのまま沈む、などという危険は無いが…問題は、動けないことだ。
五十年以上も人の出入りが無かった城である。当然、雪掻きなどされている筈も無く、城門のある正面以外の城周りには、まともに歩ける様な道など無かった。
…短剣を刺した腕に冷たい雪が触れ、痛みが麻痺していく。……これでは、刺した意味が無くなってしまうではないか。
「…何遊んでるの?馬鹿じゃん…。……あーもうっ…頭痛い………くらくらする………気分、最悪…」
窓の下で身体半分が雪に埋もれ、情けない事に身動きが取れないでいるリストを見下ろし、イブは朦朧とする意識を気合いで起こしながら、窓から上空に向かって高く跳躍した。
斜め上へ。身軽なイブの細い陰は吹雪の中を突き進み、そのまま重力に従って地面に落下し、厚い新雪に突っ込むか、に思えたが……そこは獣独特のフットワークである。
積雪に体重が完全にかかる前に素早く次の一歩を踏み出す…という、目では追えないくらいの跳躍を混ぜた素早い俊足で地を走った。
そのまま疾走を続け、イブはかなり離れた距離にある高い城壁にしがみつき、垂直の壁を二足歩行で極普通に歩くという、重力を無視した登り方で壁の上にまで辿り着いた。
高い城壁の上から遥か下方の真っ白な大地を見下ろせば、見事に嵌まった新雪からなんとか抜け出しているリストの姿があった。
……城壁が、グラグラと揺れる。
地震は、激しさを増していく。
(………何か、いる筈なんだけど………駄目だこりゃ…)
地震を起こしている元凶の、何か。…魔力の気配は感じられるのだが、本体そのものの臭いが分からない。
冷たい吹雪と、この目覚めの災いによる凄まじい飢えの苦しみが、五感を麻痺させている様だ。
窓から身を乗り出し、外に飛び降りれば、直ぐに地面と御対面だった。
新雪で出来た純白の足場は非常に柔らかく、降り立ったと同時に腰ほどまで身体が雪に減り込んだ。
底無し沼と違ってそのまま沈む、などという危険は無いが…問題は、動けないことだ。
五十年以上も人の出入りが無かった城である。当然、雪掻きなどされている筈も無く、城門のある正面以外の城周りには、まともに歩ける様な道など無かった。
…短剣を刺した腕に冷たい雪が触れ、痛みが麻痺していく。……これでは、刺した意味が無くなってしまうではないか。
「…何遊んでるの?馬鹿じゃん…。……あーもうっ…頭痛い………くらくらする………気分、最悪…」
窓の下で身体半分が雪に埋もれ、情けない事に身動きが取れないでいるリストを見下ろし、イブは朦朧とする意識を気合いで起こしながら、窓から上空に向かって高く跳躍した。
斜め上へ。身軽なイブの細い陰は吹雪の中を突き進み、そのまま重力に従って地面に落下し、厚い新雪に突っ込むか、に思えたが……そこは獣独特のフットワークである。
積雪に体重が完全にかかる前に素早く次の一歩を踏み出す…という、目では追えないくらいの跳躍を混ぜた素早い俊足で地を走った。
そのまま疾走を続け、イブはかなり離れた距離にある高い城壁にしがみつき、垂直の壁を二足歩行で極普通に歩くという、重力を無視した登り方で壁の上にまで辿り着いた。
高い城壁の上から遥か下方の真っ白な大地を見下ろせば、見事に嵌まった新雪からなんとか抜け出しているリストの姿があった。
……城壁が、グラグラと揺れる。
地震は、激しさを増していく。
(………何か、いる筈なんだけど………駄目だこりゃ…)
地震を起こしている元凶の、何か。…魔力の気配は感じられるのだが、本体そのものの臭いが分からない。
冷たい吹雪と、この目覚めの災いによる凄まじい飢えの苦しみが、五感を麻痺させている様だ。