亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
やはり、火山地帯で生まれた獣は、雪国には向いていないらしい。

それでも鈍くなった五感を出来る限り研ぎ澄ませれば、ここら一帯の中で一際騒々しい場所が一点あることが分かった。
………騒音は、城門の辺りからだ。

吹雪に混じって黒々とした魔力が散乱しているが、どうやらこの出所がその場所の様だった。

目を移せど吹雪が視界を遮って、何も見えない。時折黒い光が辺りを照らすが、何が起きているのかはさっぱり分からなかった。


…嫌な予感しかしないが、進むべき道は一択だ。



「………行くしかない…か。………リストー、あたしあっちに行ってみるからー」

城門のある方角へ指差しながら、遠く離れた場所にいるリストに向かってイブは叫んだ。

…だが、互いの距離の長さに加えて轟音を孕んだこの猛吹雪である。当然ながら、いくら声を張り上げたとしても聞こえる筈がない。

何やら腕をブンブン振り回して喚いている遠いイブの霞んだシルエットに、リストは眉をひそめた。

「………はぁっ…?…何だって…?」

深い積雪から抜け出したリストは、付着した雪を払い落としながら少々苛立った大声を上げる。

そんな原始的な伝達方法よりも、“闇溶け”の闇を介して意志伝達をした方が確実なのだが………何処かねじの緩んでしまっている両者の頭は、そこまで回らない様だった。

騒音の中で、なんとも虚しい声の掛け合いが続く。


「だから、何だって!?………聞こえねぇよ…!!」


訳が分からない!…と悪態を吐くリスト。そんな彼の半分罵倒の叫びも聞こえないのだが、何故か言っている事はなんとなくだが分かる。…最悪の体調故か、イブの気分も次第に苛立っていく。

これで最後、もう言わない。勝手に行ってやる!…と言わんばかりに、イブは大きく息を吸った。













「…だ、か、らっ!!………あたしはあっちに行…」


















―――刹那。

真横から、突風が吹き付けてきた。
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