亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


絡まっていた糸が先端から解れる様に、大蛇の身体は一瞬で分裂した。同じ大きさの、同じ長さの、同じ鋭利な口を開閉させる獰猛な大蛇が…三体。その内の二匹がリスト目掛けて口を開き、襲いかかってきた。

(―――…いっ…!?)


…増えるなんて、聞いてない。予想外の事態に反応が遅れたリストは、同時に突っ込んできた二匹の大蛇を避けること、叶わず。
一メートル大の数本の牙に貫かれぬ様、構えた二本の短剣で咄嗟に衝撃を受け止めたが、そのまま体当たりを受ける形でリストの身体は勢いよく吹っ飛んだ。


リストは吹雪の中を突っ込み、元いた厚い城壁に身体を激しく打ち付けた。ぶつかった衝撃で城壁の一部に亀裂が走り、少量の砂埃が舞う。

ぶつかる寸前に受け身を取って衝撃を半減させたのだが、それでも全身に走る痛みや圧迫感は相当なものだった。一瞬息が止まったが、肋骨を折らずに済んだだけでも幸運だと言える。


足場の悪い地上は戦闘には不利である。城壁から落ちぬ様に、伸ばした爪を壁の凹凸に食い込ませ、張り付いた。
…そして赤く光る三つの眼球を、リストは直ぐさま周囲に泳がせる。


(………何処、だ…!)

意識を集中させ、敵の姿と気配を探ったが…何も感じ取れない。
あれだけ大きな大蛇が、しかも二匹もいるというのに…。
やはり“目覚めの災い”とやらのせいなのか、上手く感知出来ない。厄介な災いさえ無ければ、こんなにてこずる事など無いのに。

なんて、歯痒い。




「………っ……出て、来やがれっ…!!…腹が減って仕方ないんだろ!!」

そう言う俺だって、訳の分からない空腹感に襲われてもう狂ってしまいそうなのだ。


腕に刺していた剣を強引に抜けば、傷口から鮮血が吹き出した。しかし、痛みは無い。身体の神経まで馬鹿になってきたらしい。

一旦壁の上に飛び乗ると、己の血が滴る短剣を振りかざしながら、リストは声を上げた。







「……来いよ…!………俺を、食らいたいならな……!!」


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