亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
―――…。
―――。
―――…。
―――。
―――…それで……良いのかい?
―――…うん。
―――……燃やさないん…だね…。
―――…うん。……僕達狩人は…命を頂いて生きてきた代わりに………死ぬ時は、他の命の血や肉にならないと…いけないんだ……。
―――…そう…なんだ。
―――………。
―――………悲しい…ね。
―――………ない…よ。
―――…え…?
「―――…悲しく、ないよ…」
手をどんなに伸ばしても、もう届かない。届く筈のない、深い闇の奥地。異界の様な、深い底。
そんな墓場という名の谷底に、我が肉親の冷たくなった器をその手で落とすというのは、一体どんな…彼等にとってはありふれた、しかし実に狂った風景なのだろうか。
吹雪の向こうで孤立する、少年二人の背中を眺めながら、ドールは思う。
マントをたなびかせ、谷の手前で仁王立ちしたまま暗い底を見下ろす二人は、一向に動く気配が無い。
「………どうにも、ならなかったの…?」
「ええ、まぁ」
…ふと、視線はそのままで背後に声をかければ、まるで他人事の様なしれっとした答えが返ってきた。
舌打ちの一つや二つくらいしたい気分だったが、そこは深い溜め息だけで済ませた。
「世間では凄いだの恐ろしいだのと言われている割には……魔の者って、案外役に立たないのね…?」
ドールは皮肉を込めてそう呟いたが、微笑が返ってくるばかりで、少しも気分は晴れなかった。
そんな顔をしかめるドールを、城壁に寄り掛かったまま腕を組んだノアはじっと見下ろす。