亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「………出来る事と出来ない事が、あるのですよ。…生死に関しては、専門外でしてね………神の真似事は、私にも出来ません…。……非常に残念なのですが…」

口元の笑みを濃くした端整な顔立ちで、ノアは小さく呟いた。







「我々は、貴方方人間のために在る訳ではないという事です」

「………あんた達がただ単に我が儘なだけなんじゃなくて?」

「おや、これは手厳しい」


黒の入れ墨に埋め尽くされた細い色白の手を口元にあて、まるで貴婦人の様にコロコロと上品に笑うノア。それを見たドールは忌ま忌ましいとでも言うかの様に唾を吐いた。

まぁ、お下品…とかいう声が聞こえたが、今回は流す。



「………空、曇ってて何も見えないけど………ちゃんと、月は…弓張月とやらは昇っているの…?」

そう言って見上げた夜空は、厚い雪雲と吹雪で闇一色。青白い月明かりの断片さえも見えやしなかった。
今日、この夜が運命の夜だというのならば、少しくらい空が晴れてくれていたって良いだろうに。

「………見えませんが…月は、確かにありますよ。綺麗な半月がね。………月が真上に来た時が、その時でしょうね」

「…それって、あとどれくらいなの?」

「三時間…も、無いでしょう。………その時は、私がお知らせしますよ。……謁見の間を開ける事が出来るのは、私だけですので」














そうやって会話を交わしている間にも、刻々と時は刻まれていく。
運命の時までもうあまり時間は無いが、その限られた時間で何も起きなければ良いが。


少年二人は、まだ吹雪の中で佇んでいた。その二人から数歩離れた背後には、ユノの母親だと名乗る女性が一人。
彼女もまた、死を選んだ勇敢な狩人の器が消えていった谷を、じっと見下ろしていた。




そこにいる三人の作り出す空間に、むやみやたらに足を突っ込んではならない………そんな気がした。





「………さっきまで暴れていたあの化け物は…?」

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