亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――…身体………………冷えちゃうから………中、行こう…」
…そう言って、こちらの返事を聞く前にレトの姿は視界の端に消えた。
ゆっくりと離れていく見慣れた背中を目で追いながら、ユノは微かに眉をひそめる。
歪んだ城門を越え、城の内部へと独り向かうレトの姿は、酷く儚げで。…そのまま吹雪に消えてしまいそうに見えた。
……後には続かずに佇んでいたユノは、少し離れた場所に立っていたサリッサに…我が母に、視線を移した。
あの巨大な嵐によって離れ離れになってから、そんなに時間は経っていない筈なのだが……交わる互いの視線は、何故だか久しく思えた。
…普段、あまり目を合わせないからだろうか。
純白の吹雪を介して見る互いの…何処か似ている色合いの瞳。
………いつも、なんだか怯えていて、泣きそうに潤んでいる…母の目。
…あんな色…だっただろうか。
「………………馬鹿、ばっかり…」
「………」
「………馬鹿。馬鹿だよ…ザイは………」
「………」
視線を逸らし、ポツリポツリと呟くレトに、サリッサは無言だった。
サリッサの心中は、どうしようもない後悔でいっぱいだった。
何か、出来た筈だ。自分にも。この身を犠牲にすれば。
…そうすればきっと…彼を救えたかもしれない。
他に、道が生まれたかもしれない。
それなのに。
私は。
(また…生き残った…)
悲しい犠牲の前に、無傷の自分。
守られてしまった自分。
…こんなの、間違っている。
彼は……ザイは、私を止めてくれたが。
やはり私は。
私は。
「………」
鞘に納めた短剣を握り締め、サリッサは唇を噛み締めた。
…情けない。
本当に。
情けない。