亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
…ザイ、と聞くや否や、サリッサの瞳には再び悲哀の色が宿る。
無力な自分に責任を感じているサリッサは、ユノに何も言い出せなかった。
無言を貫く母に、ユノは口を開いた。
「………お母様は、お荷物でしかないんだから………はっきり言って、邪魔なんだよ?…飛び込んでみたって何にもならないんだよ?………そういうの、分かってるの…?…お母様は……」
「………」
「………馬鹿、ばっかり。…お母様も、馬鹿。……どうしたって、お母様に見合う役は無いんだから………分かってないよ…分かってないから………ないから…」
「………?」
心に突き刺さる我が子の声を黙って聞いていたサリッサだったが、その声は、何故か急に途切れてしまった。
こちらを見上げる息子の表情は、不機嫌そうなそれで先程と何ら変わらない。
…一体どうしたのだろうか。
不思議に思いながらも、その端整な小顔を見下ろしていれば。
…不意に、小さな我が子の手がサリッサの顔に伸び…。
「…分かって、ないから………………………痛い思い…するんだよ……」
冷たい華奢な指先が、サリッサの切れた唇の端に触れた。
腫れて熱を宿した頬を撫でる息子の手。
目の前を左右に行き来する小さな手が……次第に、歪んで見えていった。
身体が震えた。
目頭が、熱い。
「………馬鹿なんだから……無茶、するから………怪我なんかするんだよ…」
「……っ…」
「………だから…お母様…」
「………」
「………無茶は…しないでよ……………………僕………困るから…」
「………っ……ええ…」
「………僕、怒ってるんだよ。………どうして泣くのさ」
「………ごめん……なさい…ね………」
でも、ありがとう…という小さな呟きを貰った途端、サリッサは涙を堪えるのを止めた。