亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~








泣きながら…しかし微笑を浮かべて涙を拭う母から、なんだかばつが悪そうに顔を逸らした。
その場から動こうとしない母の手を強引に掴み、城に向かってグイグイと引っ張りながら歩いた。

そのまま城門を越えれば、門は金属の鈍い音を響かせてひとりでに口を閉ざした。


泣いている母の手を引いて歩くなど…これではどちらが子供なのか分からない。
手袋越しに伝わってくる母の温かさと、遠慮がちに握り締めてくる指の絡みが。
自分よりも大きく、しかし華奢なその手が、ユノは嫌いではない。

嫌いではないのだ。



この、馬鹿な……お母様は。




















(…でも………本当に馬鹿なのは……)


瞬きを繰り返して、長い睫毛に絡んだ細かな雪を落とした大きな両眼を、ユノは前方に向けた。

白く霞んだ視界の中央の、その先には…前を見据えて歩みを止めぬまま、一度もこちらを振り返ろうとしない友の背中。

―――…友?





…だったら…。



「………苛々するなぁ…っ…!」

胸中でグルグルと渦巻く表現しがたい苛立ちに耐え兼ねて、ユノはポツリと悪態を吐いた。
その元凶でもある孤立した彼の、レトの姿が城壁内に入り、ノアとドールの元にまで辿り着いたのを目で追った後、母に一言だけ詫びて、ユノは彼の元に走った。




口を開かないどころか目も合わせようとしないまま、レトは傍らに佇んでいたノアとドールを通り越し、城内に足を踏み入れた。

元々レトは周りにも何にでも無関心な方だ。彼の性だと言えばそれで済む話だが、空気同然に扱われた身としては、非常に面白くない。


ちょっと…と、眉をひそめて声をかけようと開きかけたドールの口は……青銀髪から覗く彼の耳や頬を目にした途端、不意に、閉じられた。
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