亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
深い溜め息混じりにそう言えば、視線の先の見慣れた背中が一瞬肩を震わせ、ピタリと動きを止めた。
目に見えそうな圧迫感を放ちながらじっと睨み付けるユノに、レトは俯いたままポツポツと言葉を紡ぐ。
「………抱えて…ない…」
「…嘘だね。………君は何でもそうさ。抱えて、しまい込んで…結局重荷にしているくせに。……………何が、悲しくない…だよ」
「………悲しく、ない…」
「…怒るよ」
「………悲しく……ないったら…!」
半ば躍起に互いに譲らぬ押し問答を繰り返す二人。
部屋の前の廊下で、ユノはレトの正面に回り込もうと走り、対するレトはそうはさせまいと背中を向け…結果、グルグルと無駄に回り続ける奇妙な光景が出来上がっていた。
しかしそこは体力の差が現れる。レトを軸に回転し続けていたユノに、早くも息切れが生じてきた。そんな些細なことが一々苛立つ。
「………こっ…の…!」
ギリリと奥歯を噛み締め、ユノはもう一度回り込もうと勢いをつける振りをし、途端に足を止めた。
予期せぬフェイントに動きが鈍くなったレトの隙を突いて、ユノは彼の背中に手を伸ばした。
純白のマントに覆われた細身の肩を、強く掴んだ。
「――…だったら、どうして………!」
…グッと、掴んだ彼の肩を力いっぱい引き寄せれば。
頑なに視線も合わせようとしなかった彼の顔が、揺らめく青銀髪の隙間から、見えた。
ああ、ほら。
ほら、やっぱり。
「―――どうして、泣いているんだよ………!!」