亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
遥か、遠く。
何処もかしこも闇一色に塗りどられた夜の舞台が広がる光景。
砂漠の緩やかな曲線が描く地平線の、そのまた向こうに。
微かにだが、赤々と。
赤々と、燃える炎の光がちらついていた。
あれはきっと、闘士達の命の灯。
一つ、また一つ、それらは闇に消えていく。
明かりが見えるだけで、何も、聞こえてこない。それなのに何故だろうか。…無惨に散っていく人間の悲鳴が、雄叫びが、聞こえてくる様だった。
戦争だ。
手を伸ばしても届かないあの向こうで、戦争が起きている。
そして知らぬ内に、終幕を迎えていくのだ。
私の、知らぬ間に。
私の存在が、許されぬ場所で。
「………」
日中のあの殺人的な暑さに比べ、夜の砂漠は驚く程に、冷える。このバリアンの大陸自体は元々比較的温暖、熱帯に近い気候であるらしく、冷えると言っても底冷えする程の寒さではないのだが、やはり肌寒い。
城の窓代わりの吹き抜けには、それぞれ一本松明が立てられており、城全体を内から、そして外からも照らし続けている。
遠方から見れば、この城は闇に浮かぶ篝火同然だろう。
この明かりを目印に、暗い夜空では怪鳥が忙しなく飛び回っていた。
地上を見下ろせば、砂だらけの大地には這い回るバジリスクの姿も見える。
日が落ちてから数時間。夜更けにはまだ早い時間帯だが、鳥の類いは普通ならば就寝している時間だ。
それなのに、彼等は羽ばたき続けている。
………あの、遥か向こうに見える戦場の偵察に使われているのだろう。
人間に飼われたばかりに酷使されて……可哀相に。
………寝ぼけ眼の鳥達は、一体どんな闘いを見下ろしているのだろうか。