亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


―――…ここで私は、何をしているのだろうか。

一本の松明だけが唯一視界を照らしてくれる、城の塔の一番上の、暗い空間。

夜の帳の中を行き来する怪鳥の奇声を耳にしながら、ウルガは誰も答えてはくれないであろう疑問を脳裏で呟いた。

冷えた風が、フードからはみ出したざんばら髪を揺らし、頬や首の到る箇所に刻まれた彼の古傷を撫でていく。

視界の隅で燃えつづける松明から小さな爆ぜる音色と火の粉が弾け跳んだが、ウルガの意識はただ一点…視界の奥の、ちらつく明かりにのみ注がれていた。


日が落ちる少し前だったか。

詳細は不明だが、あの側近のケインツェルが仕掛けたらしい…噂の罠とやらにまんまとかかった反国家組織赤槍の連中が、こちらに襲撃をかけてきた。

襲撃は既に予想されていたらしく、報告を受ける数日前から賊討伐に向けて着々と準備がされていた。
彼等赤槍の襲撃に待ちくたびれていた程だ。

そして、今日。眩しい西日が地平線の向こうに消えるか否か、という時……両者は衝突した。

報告通り、襲撃は赤槍のみ。他の白と黒の二大勢力の姿は何処にも見当たらず、結果、随分と規模の小さい内乱となった。


戦力は断然、バリアン国家の方が格段上。赤槍の倍以上の兵士の数を向かわせていた。
半日…否、本の数時間で決着がつくに違いないと予想していたが、赤槍らは少ない戦力にも関わらず案外粘っているらしい。
…だが、夜が更ける頃にはもうその意地も通用しなくなるだろう。



負ける闘い。


彼等の長である少女…ドール嬢も不在の今…刃を向けるには危うい時期。下手をすれば三槍自体の勢力が削がれるというのに。

彼等も馬鹿ではない。赤槍は、分かっている筈なのに。





死ぬと、知りながら。








(………その様な戦士達とも………刃を交えることも叶わぬ…か…)
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