亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
自分には、居場所が無い。許される居場所が無い。許される存在でもない。
集団の中にいながら、孤立している。…いや、集団だからこそ、孤独が生まれるのではないか。考えてみれば人間は誰しも元々個々の存在であって、結局は独りなのだから。
夜風を防ぐマントを羽織り直し、ウルガは高い塔から降りるべく暗い螺旋階段に向けて踵を返した。
ここにいても、どれだけ眺めていても、どうせ自分は参戦など出来ないのだ。
今夜、戦場に赴いている兵士の数は全戦力の数分の一と訓練並に少ない。半分以上の兵士達が城の内外に配置されている。動かす駒は少なめに、陣地を守る駒は多めに…という保守的で臆病なバリアン王らしいやり方だ。指揮の補佐はケインツェルだった筈だが、生憎彼は体調が優れないとかで、昼間から謁見の間に姿を現していない。デイファレトでの暗殺計画の現状もどうなっているのか…全ての情報が集う彼の口から聞かぬ限り、何も分からない。
驚く程虚弱体質な彼は度々、そうやって部屋に篭る。
なにはともあれ……さて、城内警備という名の長い暇を、どうやって潰していこうか。
暇になることには慣れているが、暇をどう扱うかには慣れていない。
塔から降りきり、細い渡り廊下を独り歩いた。
広い城内。一瞬視界の隅で、松明に照らされた幾つかの人影が風の様に走り去っていくのが見えた。
何故か音も無く駆けていく同士達の奇妙な行動に、何事か…と、ウルガは怪訝な表情を浮かべる。
何か、緊急事態でもあったのか。
しかしそれならば城天辺の鐘がけたたましく鳴る筈であるし、まず、こそこそとする必要など無いだろう。
足早に渡り廊下から広い廊下に出たウルガは、曲がり角で常時槍を握って仁王立ちしている兵士に話を聞こうと、その姿を探した。
だが、何故だろうか。
緊急事態や召集がかからない限り、常にその場で警備を命じられている筈の兵士の姿が、何処にも無いではないか。