亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
現任務では一応相棒である彼女を気にするべきなのだが、正直な話彼女の安否などどうでもいい…とは言えないが。
…とにかく、とにかくだ。とにかく今は。
「―――…二匹も相手で、手一杯、なんだよ…!!」
目下の積雪から突如飛び出してきた巨大な口にいち早く気が付いたリストは、その毒牙から逃れるべく、その場から大きく後退した。
大蛇の口は空を噛み、頭上高くへと上り、そのまま勢いよくリスト目掛けて降下してきた。
この大蛇も自分達と同様、災いの影響により凄まじい狂気で頭が侵されている筈だというのに。攻撃の狙いは的確であることに加え、速度も力も一向に衰えていない。
これは、少々反則ではないだろうか。馬鹿になっているのならばもう少し馬鹿な動きを見せてくれたっていいだろうに。
…などと、愚痴に近い事を考えている間に、大蛇の鋭利な口はすぐ前方にまで迫っていた。
あの口に剣でも放り込んで舌を根元からえぐってやろうか…。
避ける直前に短剣を放てばいい。満足に動かない身体では、それが精一杯だ。
リストは瞬時に片手の短剣の握りを変え、巨大な口が目の前にまで近付くタイミングを見計らった。
同時に、脇へ避けるべく構えたリスト…だったが。
この猛吹雪の中。真後ろから微かに聞こえた、風の音色とは明らかに異なるそれに、リストは舌打ちをした。
正面には、口。
―――…背後にも…口。
何処に姿を眩ましたのかと思っていた二匹目が、まさかの真後ろに…しかも、こちらも同様に口を開いて至近距離に迫っていた。
(…挟み、撃ち…!?)
一匹に集中していたタイミングが、ずれた。
避け切れるとしても腕一本は捨てる覚悟をしなければならないのか…と、悔しげに奥歯を噛み締めた途端だった。
不意に。
…脇腹に、これまた予想外にも強烈な蹴りが入った。