亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「うおっ…!?」
致命的な蹴りではないにしろ、強烈であることには変わりない。なかなか凄まじい内臓への圧迫感に間抜けな声を漏らし、リストの身体は軽く数メートルは飛んだ。
だが蹴りを入れられた直後、猛吹雪の中でリストは確かに見たのだ。
何処からともなく現れた、その不届き者の姿を。
(―――じゃじゃ馬…!?)
…途端、大蛇と思われる低い鳴き声が辺りに響き渡った。脇腹の痛みを無視してなんとか上手く着地し、直ぐさま顔を上げて見れば…さっきまでの元気は何処へやら、フラフラと頭をふらつかせる大蛇の姿が二匹、そこにはいた。
…挟み撃ちにする筈だった獲物のリストが吹っ飛んだがために、そのままの勢いでどうやら互いに顔面衝突をしてしまったらしい。
どちらも巨体で重量のある化け物である。衝撃は凄まじいものだったのか、両者の飛び出た牙はひびが入っていた。
それはそうとして…そうだ。奴は。
「…おい、じゃじゃ馬!…てめぇ…!!…助けるなら助けるでもう少し穏便に出来ねぇのか!!礼なんて絶対に言ってやらねぇ!!」
少し離れた場所に着地していた同僚…イブの姿を見付け、リストは痛む脇腹を摩りながら罵倒を浴びせた。
イブの蹴りは、軽くても人間のそれの数倍の威力を持つのだ。普通の人間が受ければ打撲を通り越して骨折と、まず冗談では済まない。
リストの身体は耐えられるが、痛いものは痛い。ついでに憎悪まで湧いてくる。
そして、あからさまに苛立ちを露わにするリストだったが…何故か、彼女からは何の反応も無い。
…俯き、だらりと両腕を垂らし、左右にユラユラと揺れている。
吹雪の中、孤立するイブのその姿は何故か薄気味悪さを醸し出しており…ゾクリと粟立つ感覚に、リストは口を閉ざした。
「………………おい…」
「―――」
何だろうか。
何故だかとても。
…嫌な予感がする。