亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




次の瞬間には来る筈の、大蛇の襲撃による衝撃が………何故か、無かった。




……そう、何故だか大蛇は…二人の手前でピタリと停止したのだ。


一体何事だろうかとすぐさま真正面のイブから視線を移したそこには……大蛇の巨大な口。







……の、前には……………見知った背中が、一つ。






突進しようともがく大蛇の上顎を、軽々と片手一本で軽く抑えているのは。

























「―――これしきの蛇一匹に何を手こずっておられるのですか、リスト=サベス」






相変わらずの淡泊で無感情な声音、こちらをちらりと振り返り見てくる右目の眼帯。
少々腹の立つ台詞に苛立つよりも先に、その男の神出鬼没振りへの驚愕の方が勝っていて…。……リストは、閉口した。

泣く子も黙る不思議人間、国家騎士団総団長…ジンの、予想だにしていなかった登場だった。










「…ジン!?……お前…来るなら来るでもっと早く来いよ!相変わらず予測不可能だな!」

「口の聞き方にお気を付けなさい、リスト=サベス。人には人の都合というものが御座います」

「そんなもの分かって…………っ…!?」

その淡々とした彼の物言いについ反発してリストは口を開いたが………ジンの前方から突進してくるもう一匹の大蛇が目に入った途端、思わず息をのんだ。

それにジンは気付いているのかいないのか、こちらを振り返ったまま前に向き直ろうともしない彼に、前!!前見ろ前!!、と心中で叫んだリスト。…だが、そんな焦りも次の瞬間には杞憂に終わった。

「第一に、まず地理。貴方方と違ってこの城一帯に踏み入ったのはこれが初めてであり…」

突進してきた大蛇と衝突寸前、空いているジンのもう一方の腕が、まるで赤子の手を取るかの様に大蛇の剥き出しの牙を掴んで………目の前で、ピタリと制止させた。

「第二にこの猛吹雪。貴方方の居場所を突き止めるには少々厄介な気候です。この様な悪条件を背負った私に…」

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