亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
やはり淡々と話しながら、その両手で二匹の大蛇をいとも容易に押さえ付けるジン。
呻きながら掴まれた口を開閉して身をよじる二匹に、いくばくかうるさいですよ…と言わんばかりに二匹の大蛇の上顎を同時に地面に叩き付けた。
積雪に打ち付けられた大蛇は無理矢理口を閉じられ、盛大な地響きが足元を流れていった。
「遅いだの何だのと愚痴を漏らすのですか?それが承知の上での言葉なのでしたら誠に心外です」
「………………いや、あの……もういい…何でもない…」
ジンの足元で、苦しげに呻きながらもどうすることも出来ずにいる大蛇を見下ろしながら、リストは引き攣った笑みを浮かべた。
…こいつ…素手で……押さえ込みやがった。
さすがは我ら国家騎士団総団長、とでも褒めたたえるべきか。あの陛下から直々に鍛えられた彼の戦力は侮りがたし。…護衛もこのジンだけで充分足りる筈だ。
ジンのおかげで、この厄介な蛇の引き起こした絶体絶命の危機はなんとか免れた。だがしかし完全に免れたわけではない。危険分子はまだ目の前にいるのだから。
「…っ………おい、ジン!………こいつ…この馬鹿なじゃじゃ馬をどうにか……して、くれ…!!」
…この押し合い…悔しいが負けそうだ、と奥歯を噛み締めて呟くリスト。その向かいに、身の毛もよだつ様な恐ろしい笑みを浮かべてリストに襲い掛かっているイブの存在に、たった今気が付いたらしい……暴れようとする蛇二匹の頭を押さえ付けたまま、ジンは半分以上素のフェーラの姿に変わっている彼女に目を向け…。
そしてリストに視線を移し……。
何故か。
「―――…破廉恥極まりない…!!」
「え?……破廉…えぇっ!?」
わなわなと身体を震わせ、一瞬で真っ赤に染まった、普段無表情な彼からはそうそう見られないであろう顔で、全くもって意味不明な台詞を叫んだ。
「え?何?…お前…何言ってんの?……っとと…!」