亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

すぐ傍らで、何処から湧いてきたのか皆目見当もつかない羞恥に震える我等が上司に構っていれば、その隙を突く様にイブが更に力を込めて押してきた。危うく身体が傾くところだったが、そこは踏ん張る。

「………惚けても無駄です、リスト=サベス。…私は貴方方より幾分世間知らずであることは重々承知しておりますが………わ、私にもそれくらいの知識は備えているつもり……!」

「…何が?…お前一体、この状況の何を知っているんだよ!!さっさとこいつを引き離してくれよ!!おい!!」

「………お、お二方の…その手の握り方に決まっているではないですか!………存じて、いますとも………そ、それは、俗に言う……………………………恋人繋ぎ、とか申す…」




「あああああぁぁ!!!下らねぇ!!」







何っだよそれ!!と怒鳴り散らすと同時に、リストは一瞬で片手をイブの胸倉に移し、渾身の力を込めて勢いよく背負い投げた。
「にゃっ!!」という悲鳴と共に数メートル離れた先の雪中に落ちる彼女を眺めながら、火事場の馬鹿力というものは凄いとリストは思った。

ゼエハアと激しく肩で息をしたまま呼吸も整えず、直ぐさまジンに向き直る。


「お前天然だろ!!食い殺されるかもしれないって状況で、恋人繋ぎだぁ!?どんな状況だよ!?そんな台詞吐けるのは後にも先にもお前だけだよ!!絶対そうだよ!!あれが恋人繋ぎなら世の中の大半が恋人繋ぎだろうが!!」

「………………では、先程のは…こ、恋人繋ぎという繋ぎ方ではないのですか?………失礼。念頭に置いておきます。…………………さておき、今現在の任務遂行状況を報告して頂きましょうか、リスト=サベス」

「………………その切り替えの速さ、腹立つな…」





何と言うか…巻き込まれたのに、置いていかれた気分だ。悟られぬ様に顔を背けて溜め息を吐くリストの前で、ジンは“闇溶け”で何処からか取り出した刃…と言うよりも、二本の太めの長い針の様なもので、足元で蠢く二匹の大蛇の口を貫いた。

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