亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
長い舌、下顎を通り越して深々と地面に縫い付けられた大蛇。
それはまるで虫の標本の様だった。
たかが針一本で縫い付けられただけだというのに、どうやらそれだけで身動きが出来ないらしい。動かせない頭を軸に、じたばたと半透明の巨体で暴れ回り続ける二匹。
相変わらず元気な二匹の様子を眺めて…はて、とどめは刺さないのだろうか、とリストは首を傾げた。
戦闘に関しては執拗なくらい“必殺”を心掛けているジンにしては、珍しく中途半端である。そんなリストの疑問など見破っていたのか、ジンはこちらが聞いてもいないのに答えを述べた。
「………この二匹の蛇は恐らく分身です。本体を殺さぬ限り、死ぬことはありませんよ」
「分身?………そういえば…最初は一匹だったのに、急に三匹に分かれたな…」
…ということは、この目下の二匹とは違うもう一匹……イブが相手をしていたであろうその残りの一匹が、本体なのだろう。…その本体を殺さぬ限り、二匹の分身は暴れ回り続けるのか。
…しかし、肝心の本体の所在が分からない。…相手をしていたイブに聞こうにも、あの有様だ。
「………本体と思われる蛇の血の臭いがします。跡を追えばいい話ですが、捜そうにもここら針山地帯は洞窟だらけ…彼等の寝床同然の穴に迂闊に入るのは危険極まりないでしょうし………それよりも、まず…」
…ちらりと、眼帯をしていない方の左目がリストを一瞥した。
「………貴方方二人は、しばし休息をとるべきです。…平然を装っていても私にはバレバレですよ、リスト=サベス。災いの影響をまともに受けておられるでしょう?………彼女と共に、安全な場所でその息を整えなさい」
ここも次期、安全ではなくなりますから…という意味深な言葉を呟いて、ジンは背中の太い帯の結び目から取り出した小さな袋をリストに投げて寄越した。
「…念のため、と作っておいた鎮静薬です。………完璧とは言えませんが、多少は抑えられる筈です」
それはまるで虫の標本の様だった。
たかが針一本で縫い付けられただけだというのに、どうやらそれだけで身動きが出来ないらしい。動かせない頭を軸に、じたばたと半透明の巨体で暴れ回り続ける二匹。
相変わらず元気な二匹の様子を眺めて…はて、とどめは刺さないのだろうか、とリストは首を傾げた。
戦闘に関しては執拗なくらい“必殺”を心掛けているジンにしては、珍しく中途半端である。そんなリストの疑問など見破っていたのか、ジンはこちらが聞いてもいないのに答えを述べた。
「………この二匹の蛇は恐らく分身です。本体を殺さぬ限り、死ぬことはありませんよ」
「分身?………そういえば…最初は一匹だったのに、急に三匹に分かれたな…」
…ということは、この目下の二匹とは違うもう一匹……イブが相手をしていたであろうその残りの一匹が、本体なのだろう。…その本体を殺さぬ限り、二匹の分身は暴れ回り続けるのか。
…しかし、肝心の本体の所在が分からない。…相手をしていたイブに聞こうにも、あの有様だ。
「………本体と思われる蛇の血の臭いがします。跡を追えばいい話ですが、捜そうにもここら針山地帯は洞窟だらけ…彼等の寝床同然の穴に迂闊に入るのは危険極まりないでしょうし………それよりも、まず…」
…ちらりと、眼帯をしていない方の左目がリストを一瞥した。
「………貴方方二人は、しばし休息をとるべきです。…平然を装っていても私にはバレバレですよ、リスト=サベス。災いの影響をまともに受けておられるでしょう?………彼女と共に、安全な場所でその息を整えなさい」
ここも次期、安全ではなくなりますから…という意味深な言葉を呟いて、ジンは背中の太い帯の結び目から取り出した小さな袋をリストに投げて寄越した。
「…念のため、と作っておいた鎮静薬です。………完璧とは言えませんが、多少は抑えられる筈です」