亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

“闇溶け”で取り出した、クナイとかいうジンだけが使う独特の武器を数本両手に握り締め、ジンは徐々に殺気を纏っていく。

「…憶測ですが、群れはここら一帯を根城にしている蛇であると思われます。この国では『白の主』と呼ばれている獣で、その特異体質と能力の高さ故に、狩人さえも戦闘を避けるとは聞いていますが………群れとはいえどもそこの二匹の大蛇ほど大きくはありません。貴方方は一寸待たれよ、始末して参ります」

内容はなかなか大事な話だと言うのに、ちょっとそこまで買い物をしてきます、とでも言うかの様な軽い調子のジン。
蛇の群れを相手に独りで挑むなど、いくら彼が超人的な戦士でも少々危険過ぎる。

それに、仮にも彼は上司。それを差し置いて大人しく待ってなどいられる訳が無い。
……律儀に全部独りで片付けようとするその考えは、彼の困った性格の一つだ。

「冗談言うな。…いや…お前は冗談言う様な人間じゃないけど。……とにかく、俺も行くからな。じっとしていたら凍え死ぬ」

自分で刺した刺し傷は地味に痛いが、身体ならもう大丈夫だとアピールしながらズカズカと前に歩み出る。そんなリストをジンの鋭い隻眼はじっと凝視し、静かに眉をひそめた。

「………彼女は、どうするのですか。…さすがにこんな所に放置という訳にはいきませんよ…」

ちらりと二人の視線が移動する先には、依然、目を覚ます気配の無い積雪に埋もれているイブ。
この時点で半分人間の姿に変わっており、先程から「にゃ」とか「ニク」とか不可解な声を漏らしている。

「………正直な話、放置していてもこいつが危ないなんてことは、多分無いと思うが………………とりあえず、連れていけばいい。目を覚ませばある程度の戦力にはなる。だから今は一先ずこいつをおぶっていって…」

…その途端、今の今まで無表情だったジンの顔が何故か紅潮した。色白の肌故に、赤みが差すとすぐ分かる。

「おぶるなど………と…と……とんでもない!!」
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