亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「……僕の宿命に、僕の意思は無かった………でも…何となくだけれど………最近、分かったんだ」
王になることは宿命だけれど、それだけでは、駄目なんだってことが。
「………貴女は、僕に何を望んでいるんだい?…お母様…」
「………」
不意に、ユノが背後のサリッサに振り返った。クルリとこちらに視線を注いでくる、青い瞳。そこに表情は無い。
我が子の眼差しは、サリッサにとっては愛おしいものであると同時に、言葉には出来ない互いの溝を感じさせるものでもある。
視線を重ねる度に、サリッサは劣等感や罪悪感といった、自分は彼を見る価値も見られる価値も無い様な、そんな気がするのだ。
本当は目を逸らしたくて仕方がない。あの子を、不快にさせたくない。
だが今は、少しだけ、違う気がする。
「………私、は…」
今、は。
一人の、母親として。
「………貴方が望む事が出来る事を…私は、望むわ」
この子の、望むままに。
孤独の中に閉じ込められていたこの子だからこそ。
この子に、彼に、自由を。
自由な、道を。未来を。
「………相変わらず、変な事ばかり言うね…お母様は。………望み、か。………望みなら…あるよ……僕にも、望みはあるよ」
最近、僕にも、やりたいことが見付かった。
王になるだけでは駄目。王として、この国を建て直すにあたって、自分は、動かなければならないのだと。
この国を、どうすべきか。僕の望みは、そこにある。
「…ここにくるまでの事、全部…振り返ってみたんだ。………初めての旅で、街を見て、民を見て、狩人に会って…敵に襲われて………危うくドールに殺されかけてさ…」
そう言いながら笑って彼女に視線を移せば、素知らぬ顔でそっぽを向くドールが見えた。
「…戦って…逃げて…助けられて………こうやって、生かされて…………………………僕は…決めたんだ。…僕は、僕自身が決めた使命を…見付けたよ………僕の、夢だ」