亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
すっと顔を上げるや否や、ユノは直ぐさま腰を上げて部屋の扉に歩を進めた。
ドアノブに手を伸ばし、ゆっくりと扉を開け放った先の暗い廊下に出てみれば、まるで番人の様に扉の横で壁を背に座り込んでいるレトの姿があった。
マントを羽織り、縮こまる彼が両手に抱くのは鞘の無い抜き身の剣。侵入者がいつ来ても対応出来る様にと部屋の前で独り番をしていたレトは、退室してきたユノをいつものぼんやりとした目で見上げた。
高低差のある交わる視線の間に静寂が流れ…自然と、二人は笑みを浮かべた。そこには、先程二人で泣き腫らした時の涙の面影は微塵も見られなかった。
「…………………お話………もういいの…?」
「…まぁ、お喋りばかりもしていられないからね」
「………そうだね。………もう、時間………だもんね………」
「…ねぇ、レト…」
その場でゆっくりと立ち上がったレトは、何処か遠くを見ているかの様なユノを不思議そうに見詰めた。廊下の先の闇を凝視していた彼の目は、何か思い詰めているのだろうか。…微かに揺らいでいた。
「………君も、聞こえていたと思うけれど………僕は、やりたい事を見付けた…いや、決めたよ」
やりたい事。…彼の言う様に、始終、レトは扉越しにユノの言葉を一言一句逃さずしっかりと聞いていた。強い決意が見え隠れする彼の言葉は、少し震えていた様に思えた。そして、酷く、重々しく聞こえた。
彼は、ユノは………その自尊心の高さ故にか、自分の心をあまりさらけ出そうとはしない。他人に本心を見られるのが嫌いなのだと言う。そんな彼の胸の内の告白だからこそ、レトはしっかりと、耳を澄ませた。
「………うん」と相槌を打つレトに、ユノは面と向かって再度口を開く。
次いで出た彼の言葉は、明るいいつもの彼のそれとは真逆の………小さな、不安さえも含んでる様な…。
「―――…………………僕が王になった後も、君は、一緒にいてくれるかい?」