亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「ねぇ、レト………君って、天然の女泣かせになりそうだね…」
ユノの呟きに………え?、と途端に悲しそうな表情を浮かべたレト。だがお喋りをしている間に先を行くノアとの距離が広がっていた事に気付き、慌ててその背中を追い掛けるべく話を中断した。
曲がり角に一切遭遇しない真っ直ぐな廊下を進んで行けば、徐々に見知らぬ風景が目に飛び込んできた。
色鮮やかなステンドグラスの窓に、レリーフが施された壁や柱、天井にぶら下がって列をなす古びたシャンデリア。
見たことが無い、城の風景だ。歩けば歩くほど、それは華美に、豪華絢爛な輝きに染まっていく。
………玉座のある、謁見の間に続く道なのだろう。
玉座はもう、そこだ。
…期待からか、隣に並んで歩くユノの顔が、自然と好奇心に満ち溢れる笑みを浮かべていく。
いつもに増してウキウキと上機嫌な彼を横目で見詰めるレトに、ユノは不意に口を開いた。
「……レト…さっきの、僕の夢の話だけど…」
「………うん」
深く青い瞳が、視線を交えてきた。そこにあった笑顔が、突然すっと引っ込んだ。…その至極真剣な表情は、先程の部屋で独り思い詰めていた時の顔と、同じだった。
何か重い決意を語っているように見えたが、レトには分からない。
その答えを今、ユノは小声で、自分だけに話してくれた。
「………………誰も悲しまない、誰も憎み合わない……平和が、いい。………平和を作りたいな……………漠然としているだろう?…僕の夢…」
…平和。
それは確かに、漠然としていて、曖昧で、掴みどころの無いものだが………とても温かい、いいもの。…きっと一番、人間が欲しているものだ。
平和を作ることが一体どういう事なのか、残念ながら自分の頭では上手く整理がつかなかったが、それはとても素敵な事だと、何となくだが…レトは思った。
「………平、和…」
「そうだよ…平和。………ザイが死んでから、僕は…もう誰も……下らない争いで死んでほしくないって、思ったんだ…。………だから、僕はそのためにも…」