亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――……お腹はいっぱいでしょうか―……紅茶―…のおかわりはいかがですか―………眠くなってきましたか―………」
……ぱたり、と頭上に上げていた両手を下ろし、クルクルと回るのを止めた。
氷柱だらけの天井を見上げながら、ゆっくりと玉座への階段を一段ずつ上がって行く。
さっきまでの楽しげな雰囲気は何処へやら。今は遊びに飽きてしまった子供の様に退屈そうで、ぼんやりとした表情を浮かべたままフラフラと歩いて行く。
しかし、その薄く開いた唇から漏れる小さなメロディーは途切れ途切れではあったが、続いていた。
「………………お眠り下さい……私が側に―ついてます―……………………目覚めの朝が―…………………………………朝の目覚め…?目覚めの朝?」
はて。……どちらが正しかったでしょうか。
こめかみに手を添えて、うーん…と低く唸りがら首を傾げて記憶を辿るが……答えは、出ない。
………昔から毎日歌っている筈なのに。
仕方無く、その辺りの歌詞は適当に誤魔化し、その先の方から歌い始める事にした。
………何もかも凍て付いた冷たい玉座にそっと近寄り、お世辞にも綺麗とは言えない傷だらけの背も垂れをそっと…指先で撫でた。
美しい青色の光沢を放つ玉座は、よく見ると細かな亀裂や焼け跡が点々と刻まれていて……それでも、尚も輝くその神々しさは…妙に、痛々しかった。
しかし、それさえも愛おしむ様に……女の様な色白の、ほっそりとした指先は撫で続ける。
そう…愛しい。
愛しいのだ。