亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
我が子を見詰める母親の様に。
恋に胸を焦がしながら恋人を見詰める様に。
宝物を見詰める子供の様に。
無限に込み上げて来る愛しさで、目の前の凍て付いた思い出を愛撫する。
私の、思い出。
私だけが知っている…私だけが持っている思い出。
愛しいものが思い出となってしまった悲しみと、虚しさを埋めてくれるのは………………この優越感だけ。
お気に入りの場所は、この玉座の真後ろ。
大きな背も垂れに寄り掛かり、膝を抱えて、顔を埋めて目を閉じる。
暇な指先は、長過ぎる髪を弄っている。
耳を澄ませると、エコー達の可愛らしい笑い声が聞こえてくる。
氷付けの人間の死体で遊んでいるのだろう。飽きたら骨も残さず食らってしまう……食欲旺盛なお嬢さん方だ。
そんなもの食べてはいけませんよ。
人間なんか食べたら………おかしくなってしまいますよ。
………………近頃、大地が騒がしい。
不機嫌な吹雪の様に、荒々しい。
我らが主、アレスの気紛れな御告げが……実行されようとしているのだろうか。
「―――お眠り下さ―い―………私も疲れました……月夜に―この身を預けて―……とにかく夢で、会いましょう―………………………………………………………………………………………………………………………………………………王様なんて要らないのに」