亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
―――……身震いした。
それは何の前兆も無く、ただ、唐突に。
恐怖を前にした時の様に。
本能が、震えた。
何に対しての恐怖なのか。
両手で肩を擦りがら、イブは首を傾げた。
………巨大な、力………存在感。
悍ましい膨大な魔力を感じ取ったのは、どうやらイブだけではなかったようだ。
……傍らでくたびれた地図を見ていたリストも、顔をしかめたまま…辺りをキョロキョロと見回している。
「………………嫌な空気……」
「………ああ…」
珍しく意見の合った二人は、雪景色しかない北の方角をじっと睨む様に見詰めていた。
北のその更に北。
遥か遠くのその彼方から………フェーラとしての野性の本能を刺激する、妙な魔力を感じる。
それはあまりにも大き過ぎて……理解し辛いものだ。
だいぶ距離はある。しかし、こんな魔力…もし目の前にしたら…どうなってしまうのだろう。
………発狂でもしてしまうか…。
「………………リスト……この嫌ぁ~な魔術痕は何よ……」
………まだ、手の震えが止まらない…。
「………俺に訊くな…!………………とにかく……その辺の魔物の類いが持ち合わせている様な、やわな魔力じゃないな。………………魔の者の魔力に似てる……」
「………………にしてはデカ過ぎよ。………………あ―やだやだ!!…あっちって城がある方角じゃない!!……………行く気が一気に失せた……」
彼女にしては珍しく弱気な発言だ。
だがそれ程までに、ひしひしと感じるこの魔力は不気味で、大きくて………重過ぎる。