亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………変な感じだ。
…考えれば考える程、胸の辺りに何かがつっかえている様な…奇妙な違和感に苛まれる。
これまでの人生で感じた事の無い不可解な感覚に、レトはどうする事も出来ず、ザイの話が一切頭に入らないまま天井と床を交互に眺め………とうとう、独り吹き抜けの窓から身を乗り出し、塔の屋根に昇り移った。
一度足を滑らせれば、この数十メートルの高さから真っ逆様に落ちてしまいそうな…不安定な傾斜の屋根。
雪も積もり、厚い氷がびっしりと張っていたが、滑りやすい筈の屋根をレトは難無く昇り、何食わぬ顔で腰を下ろした。
煉瓦造りの壁を一枚隔てた真下の部屋から、ザイとサリッサの声が聞こえて来る。
これからの旅の危険性や、注意すべき点などの助言と………袋の中で硬貨が擦れ合う、ジャラジャラという甲高い音。
………報酬を受け取ったらしい。
音からして、その額はなかなか悪くない値の様だ。
収入が入った時は、あのやけに美味しい街の食べ物が食べられると、ウキウキするものなのだが………何故か今は、そんな気分になれない。
「………」
………………よく分からないけれど……なんだか…………………………寂しい。
寂しい?
どうして?
ねぇ父さん、これ、何なのかな?
何でも知っているコム爺なら、分かるかな?
何かな。
ただただ、無限に広がる暗闇の世界をぼんやりと眺め、ふーっと白い息をその漆黒に向けて吹き付けた。