亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――ユノ…!?何をしているの!?」
………と、後はこのまま夜明けを待つばかりとのんびり構えようとした途端。
……驚愕に満ちたサリッサの叫びが、真下の部屋から響き渡った。
何故か焦りがちらつく彼女の叫びに伴い、「よいしょっと」というユノらしき声が混じって聞こえてきた。
はて…何事だろうか、と首を傾げ、レトは身を乗り出して屋根の端から真下の部屋を覗き込んだ。
―――直後、真下の部屋の明かりが差し込む視界の真ん中で……………小さな手が、屋根と壁の境目である縁を掴んだ。
………目下に現れた小さな手の後を追う様に、少し雪を被ったユノの頭がひょっこりと飛び出した。
この屋根の上に昇った自分が言うのも何だが、非常に危険極まりない壁昇りをしているユノ。
この屋根の上に行くには、吹き抜けの窓から壁をよじ登り、滑りやすい氷の縁を掴んで勢いを付けて昇らねばならない。下を見ない様にしながら。
危ないということが、はたして分かっているのか。
好奇心で何でも動きそうな王子様は、無謀にも、レトのいる本来人が腰掛ける場所ではない屋根に、よじ昇ってきた。
「………」
「………」
ぼんやりと見下ろすレトと、宙ぶら状態でちょっと必死なユノの視線が重なり、何とも言えない空気が一瞬流れた。
「………見てないで引っ張ってくれない?」
「………………うん」
ユノが落ちる、落ちるというサリッサの悲鳴を耳にしながら、レトはユノの手を掴み、勢いよく引っ張り上げた。