亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
谷や岩山に囲まれた、深い銀世界の中に孤立する神声塔。
長年誰も気味悪がって寄り付かず、たまに獣の足跡が残っているだけの、重々しい塔が仁王立ちする殺風景な丘。
粉雪を飽きずに散らす雪空を舞う鳥か、雪の精くらいしか見えないその高い塔の天辺に…。
もしかしたら史上初かもしれないが、膝を抱えてちんまりと縮こまる、二つの並んだ人影。
高過ぎるこの塔の天辺には、地上よりも冷たい風が容赦無く吹き付けてきたが……二人は何食わぬ顔で、そこから見える広大な景色を眺めていた。
「………真っ暗で何も見えないね…」
黙り込んでいた双方だったが、ユノの白い吐息を交えた呟きが、その沈黙をやんわりと破った。
まだ日が昇っていないデイファレトの大地は、確かに真っ暗で………無限の闇が広がっている。
人や獣も、何もいない様な世界だ。
「………………うん」
いつもの素っ気無いレトの返事に、すぐ隣りでユノが苦笑した。
「………あのさ、レト」
「………うん…」
フッと息を吐き、再び遠くを眺め始めたかと思うと、ユノはポツリポツリと話出した。
「……………僕はね………生まれた時から………………籠の中にいたんだ……」
「………………籠の中……?」
「………そう。………最初から自由の無い、籠の中さ………。………………赤ん坊の頃から、ずっと同じ部屋にいて………同じ窓から、毎日同じ景色を見て……同じ天井ばかりを見上げて………………………まるで監禁生活……いや、多分監禁だったんだ」