亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




頑丈で細い弦はキリキリキリ……と、甲高い鳥の鳴き声に似た呻きを漏らし長い弓を徐々に反らせていく。

ダンテの弦を充分引き絞った両腕が適度な位置で止まるや否や、矢も何も番えていなかった箇所に、キラキラと光る氷の結晶が集まっていく。


彼の利き目である右目が標的を完全に捉えた時、鋭利な刃を持つ透明な氷の矢が、子供の身体を貫こうとダンテの両腕の中に収まり、静止していた。





…丘を歩く少年。

………ここからでは顔も何もよく見えないが…無邪気に、笑っているのだろうか。





「………恨むなよ…」


ダンテは利き目で少年を睨み付け………鋭い剛弓を放つべく、一瞬、身体を強張らせた。


















途端。


















………ど真ん中に標的を映し、真直ぐな眼光を放つダンテの視界に………。


…………………突如…別の人影が現れ、ダンテの視線を断ち切った。

(………ちっ…)


丘の下にいた者の一人が、少年の側に歩み寄り、丘から降りようと促していた。

………このまま、前を遮っているあの人間から射殺してもいいのだが…その白いマント姿はよく見れば……同業者………狩人ではないか。
やはり、狩人を護衛につけていたらしい。
今ここで矢を放てば、他の者にこちらの居場所がばれてしまう。

………何処のどいつが護衛なんぞ…。




忌々しい…とでも言うかの様に顔をしかめ、ダンテは一旦弓を下ろした。
……矢は飛び立つ機会を失い、手中で細かく砕け散った。



「………おや、あれは狩人だね…。………何処のどなた?…ダンテ、見えるかい?」

「………少し遠い。はっきりとは………」
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