亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
今のレトの目は、いつものぼんやりとした寝ぼけ眼ではなく、何物も見逃そうとしない鷹の如き鋭い眼光を秘めていた。
こういう時の顔や戦闘中の姿は、ザイによく似ている。
その辺りはさすが血の繋がった親子である。
「………何かいるのかい…?」
「………」
四方八方からユノを守る様に構えて歩くレト。
聞こえてくるのは、風の音ばかり。風の唸り声は近くにある崖に反射して、奇妙な音色を奏でていた。
(………………狙われて………た………?)
確かに本のついさっきまで………丘を歩くユノ目掛けて静かな殺気が注がれていたのだ。
咄嗟に彼の前に飛び出してみたが………殺気は嘘の様に消え失せた。
………………獣か何かだったのだろうか。………それとも…。
「………ここは目立つから……………早く、降りよう…」
辺りの様子を窺いながら、レトはユノの手を引いて丘を降りていった。
下で待っていたザイも、やはり何か感じ取ったのか、心なしか辺りを警戒していた。
何気無くレトはザイの元に歩み寄り、あちらこちらに視線を走らせながら口を開いた。
「………父さん…」
「………………ああ………何か…いや、誰か………いるな」
…鋭い殺意の刃を表に出さず、息を潜める何者かの気配が……微かに存在する。
………大抵の気配は、その出所をすぐ突き止める事は出来るのだが………その距離は愚か、方向も何も分からない。
………これは並の人間が出来る業ではない。
(………………狩人……か……?)
………王族殺しの依頼を受けた、同業者か。
……だとすれば、ここは少々…危ない。