亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
右は雪の丘。左は暗い森林。
敵の目から身を隠し、逃れるならば、森の暗闇に突っ込むのがこの場では一番の策。
ザイは丘と森の境目のルートから外れ、そのまま真直ぐ左手に広がる森林の海へ向かった。
ザイとサリッサが木々の間に飛び込むのを見詰めながら、レトもそれに続こうと速度を上げた。
………その、直後。
「―――…!?」
ハッと何かに気付いたレトは咄嗟に立ち止まり、ユノの肩を強引に掴んで二人諸共その場に伏せた。
「うわっ!?」とユノは驚嘆の声を漏らし、冷たい雪に顔を突っ込んだ。
…途端、厚い積雪に倒れ込んだ二人の頭上を、鋭い氷の矢が目にも止まらぬ速さで走り抜けていった。
長い氷の矢は木々の幹に深々と突き刺さり、役目を終えたかの様に一瞬で砕け散った。
「―――レト!!」
暗い森の手前でザイが叫ぶ。
しかし、そんな父に振り返っている暇は無い。
すぐさまユノを引っ張って起き上がり、レトはユノを後ろに下がらせて矢が放たれた方に向き直った。
目を向けた先に広がるのは、風一つ無い雪に溺れた大地。
自分達の足跡が転々とついた白い大地の……その延長線上に…。
………一人……孤立した影が、佇んでいた。
……レトはその人間から決して視線を外さないまま、無言で背中の剣をスラリと抜いた。
手元でクルクルと剣を回し、ギュッと馴染んだ柄を握り締める。
「………レト………………あれは……狩人…?」
後ろでレトを見守るユノは、微動だにしない人影を睨んでボソリと呟いた。
「……………………………多分。………………………離れてて…」