亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

右は雪の丘。左は暗い森林。
敵の目から身を隠し、逃れるならば、森の暗闇に突っ込むのがこの場では一番の策。

ザイは丘と森の境目のルートから外れ、そのまま真直ぐ左手に広がる森林の海へ向かった。

ザイとサリッサが木々の間に飛び込むのを見詰めながら、レトもそれに続こうと速度を上げた。


………その、直後。


「―――…!?」

ハッと何かに気付いたレトは咄嗟に立ち止まり、ユノの肩を強引に掴んで二人諸共その場に伏せた。
「うわっ!?」とユノは驚嘆の声を漏らし、冷たい雪に顔を突っ込んだ。



…途端、厚い積雪に倒れ込んだ二人の頭上を、鋭い氷の矢が目にも止まらぬ速さで走り抜けていった。

長い氷の矢は木々の幹に深々と突き刺さり、役目を終えたかの様に一瞬で砕け散った。


「―――レト!!」

暗い森の手前でザイが叫ぶ。
しかし、そんな父に振り返っている暇は無い。

すぐさまユノを引っ張って起き上がり、レトはユノを後ろに下がらせて矢が放たれた方に向き直った。




















目を向けた先に広がるのは、風一つ無い雪に溺れた大地。
自分達の足跡が転々とついた白い大地の……その延長線上に…。








………一人……孤立した影が、佇んでいた。













……レトはその人間から決して視線を外さないまま、無言で背中の剣をスラリと抜いた。

手元でクルクルと剣を回し、ギュッと馴染んだ柄を握り締める。



「………レト………………あれは……狩人…?」

後ろでレトを見守るユノは、微動だにしない人影を睨んでボソリと呟いた。


「……………………………多分。………………………離れてて…」
< 488 / 1,521 >

この作品をシェア

pagetop