亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
臨戦体勢に入ったレトは、右手に剣、左手の指の間に小さなナイフを挟み、敵との距離がだいぶある中ジリジリと構えた。
………いつでも、動ける様に。
「………レト……あの狩人………少しだけ小さくない?………大人じゃないよ…」
「………子供……年上…だろうけど……」
動かぬ敵の姿は、確かに子供の様だった。身長も自分達より頭一つ分大きいくらいだし、身体付きも鍛えられてがっちりとはしているものの、成人と比べればまだ若く感じた。
………だが……子供にしてはやけに重々しい殺気を感じる。
仕事で獲物を狩る時のそれとは違い、もっと陰湿で、もっと生々しい…。
「………………あれも、殺すの?」
………沈鬱な面持ちで、ユノは言った。
………先日の、あの少女の狩人の息の根を止めた場面が脳裏を掠めた。
残酷な行いに酷くショックを受けたユノは、言葉を詰まらせた。
「………あっちが…………私闘を望むのなら……」
「………でも………掟だからってそんな…!」
…やっぱり、間違っている。
そう訴えようとしたユノに、不意に………レトが振り向いてきた。
敵を前に振り返るなど、あってはならない行為だというのに。
………こちらを見詰めるレトの顔は………彼は………………本の少しだけ、微笑んでいた。
普段笑顔なんか浮かべない彼が、ここ最近時折見せてくれる様になった、綺麗な笑み。
少し悲しげな微笑を浮かべたレトは、ユノにしか聞こえないほど小さな声で、囁いた。
「………僕………………友達を守りたいんだ………」