亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………」
…掟だとか習いだとか、そんなものは関係無しに。
そう言ってくれたレトを、ユノはただ真っ直ぐ、見詰めていた。
………それから本の少しだけ笑って、ユノは肩を竦めて見せた。
「………死んだら……絶交だからね…」
「…うん。……………………………父さんの側に、行ってて……」
ユノは言われるがまま、ザイとサリッサがいる方へ少しずつ後退していった。
雪が、ちらつき始めた。
白銀の舞台には、刃を握る二人の役者だけ。
気兼ねしてだんまりを決め込む風や、恐縮仕切って歌も歌えない獣達が見守る、恐ろしく静かで殺風景な舞台。
そんな舞台を飾るのは、その純粋な白さと、刃の鈍い光沢と、心地よい…殺意の塊。
…一瞬だけ、微風よりも弱々しい空気の読めない風が、大地を這って行った。
微かに揺らめく、双方の白いマント。
その時、ピクリとも動かなかった敵が………一歩……歩を進めてきた。
直線上にいるレトに向かって、ただ真っ直ぐ、徐々に………距離を、詰めてくる。
その動作に、一切の迷いは無い。
「………」
レトは剣を握り直し、近付いてくる敵を向かい打つべく身構えた。
……ゆっくりと、単調なリズムを刻んでいた敵の足音は、段々と早く……そして乱れていく。
速度を上げてきた敵。
その距離約十メートルとなった時、敵は突然、走り出した。
「………バ………ィア……」
突進してくる敵はくぐもった声で何やら叫んだ。
レトが眉をひそめた途端、敵の声は、舞台に響き渡った。