亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



「………」

「………………忘れたとは………言わせないっ…!」

ひたすら沈黙を守り続けるレトに、少年は不敵な笑みを浮かべ、体重をかけて押してきていた剣を突如…斜めに傾けて刃を反らした。

互いの剣は火花を散らして擦れ合い、甲高い鉄の唸りの余韻を合図に一旦離れた。

しかし、少年は間を開けず第二の攻撃を放ってくる。


絶える事無く連続して切り付けてくる……重く、切れのある俊敏な刃。
頭上から、右から、左から、真っ直ぐ突きで………動きの読めない太刀筋に、レトは受け止める事しか出来ないでいた。






長いマントを翻し、火花と刃こぼれした破片と刃の轟音を舞い散らせる乱闘。
それは止む事を知らない。





目にも止まらぬ速さでぶつかりあう狩人同士の戦い。

そこには、貴族の騎士や兵隊の様な格式張った付き纏う気品は一切無く、あるのは………純粋な闘争心。

闘争心をも越えた、生にしがみつく本能の、檄。













「………ザイ!……レトを助けてよ!………どうして黙って見ているのさ!!」


目の前で積雪を蹴散らしながら行われている速過ぎる攻防戦。
剣術などの武術にはからっきし縁が無く、そもそも目が追いつかないユノには、どちらが優勢か、劣勢かなど全く分からない。

だが、ここでザイが加われば勝敗はあっという間に決するに違いない。
先程からそう思ってザイをチラチラと見上げているのだが……何故か当の本人は気難しい表情を浮かべたまま、息子の孤独な戦いを傍観しているではないか。


レトの俊敏な動きの一つ一つを、目で追っている。

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