亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………レトは………名を呼ばれた……」
ポツリと、ザイが呟いた。不安げな表情で隣りに佇むサリッサが振り返る。
「………それが…どうしたのです…?」
「………名指しでの私闘は、他人の介入は出来ない。相手の決まった戦いとなる。………………私は、参戦出来ない……」
レトが指名された事により、この舞台はもはやこの二人だけの舞台。
………指名したあの少年が中断するか、レトが倒されるかでこの戦いは終幕を迎える。その間、誰一人として、手出しは出来ない。
仲間に助けてもらった時点で、その狩人は死を恐れる未熟者…『屍弓(しかばねゆみ)』という汚名がつけられる。
………戦士としてはもう死んでいる、という意味だ。
「………おかしいよ!!」
そう説明するザイに、ユノは声を張り上げて突っ掛かった。
ザイのマントの端を強く掴み、じっと戦いを見詰める彼を見上げた。
「………狩人の世界がどれ程厳しいか……君等がどれ程縛られているかは分かった。………でも………でもだよ!………レトは…僕を守るために戦ってくれているんだ!掟じゃない!これでレトが死んだら………どうするの!!どうするのさ!!ザイ!!…貴方………父親なんだろう!!」
鼓膜を震わせる、ユノの言葉。
………所詮はやはり、自分達と彼等は、狩人と貴族。
互いの文化や習い、意識には相容れない部分が多すぎる。
………ユノの言っている事は、正論だ。
だが………狩人の世界では、それは通用しない。戦いにおいては、情を捨てる事が当たり前なのだ。
父親だから。
息子だから。
だから………どうした…。