亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………ああ、ユノの声だ。
今度は、ちゃんと聞こえた。
………戦いはいつも独りだけれど。
………今は……僕…………。
「―――……レトバルディアアアアアア―!!」
咆哮する敵が、剣を構えて真っ直ぐ突き進んでくる。
串刺しにでもしようというのか、それは突きの構えだった。
「………………独りじゃ、ないんだね……」
誰にも気付かれる事のない、本の一瞬だけの微笑を浮かべ………レトは揺らめく炎に似た静かな闘志を、その瞳に宿した。
腹部目掛けて真っ直ぐ、敵の鋭利な刃が伸びてきた。
本の少しだけ身体を捻り、紙一重でレトは横に避けた。
脇を通り過ぎる剣はすぐにそのまま横薙ぎに払われ、レトの身体を真っ二つにしようとしたが………それよりも速く、レトは相手の懐に飛び込んだ。
敢えて飛び込む事で僅かな隙を突いたレトは、握っていた剣の柄の先を構え、至近距離にある少年の喉元に思い切り突いた。
「―――がっ……!?」
一瞬、鈍い痛みと共に息が止まった。
目を白黒させてのけ反った少年の手をはたき、剣を落とさせた直後、レトは相手のがら空きの胴体を渾身の力を振り絞って勢いよく蹴った。
普通の11歳の少年が人を蹴っても、相手はのけ反るくらいだろうが、そこは11歳の狩人。
ひ弱そうな見た目とは裏腹に、レトの蹴りは少年の身体を軽く五メートル以上は飛ばした。
蹴り飛ばされた少年は積雪に跡を残しながら転がり、痛む喉を押さえて素早く立ち上がった。