亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
ゼエゼエと掠れた声を漏らす。
息も切らさず向かいに佇むレトは、少年の剣を拾いあげ、見せびらかす様にクルクルと手元で回す。
「………………取りにきたら……?」
微かな嘲笑を浮かべて呟いたレトに、少年は凄まじい怒りを覚え、腰から別の剣を抜き出した。
同時に、レトも少年の剣で構えた。
(………もう、さっきの手は使えない。………飛び込むのは逆に…危険……)
…同じ手は通用しないだろう。
相手はこちらの動きに、より敏感になってしまっている。
………またどうせ向こうから突っ込んでくるだろうから、普通に受け止めれば押し合いが始まる。………きりが無い。
………次の一発で決めたい。………決めるならばやはり…。
(………………抜刀………。………でもあれは危険過ぎる…)
…一度でいい。彼の注意を一瞬だけ………逸らす事が出来れば。
しかし、どうやって。
そうこうしている内に、少年は予想通り再び、舞い散る雪や風さえも蹴散らす勢いで吶喊してきた。
そんなに遠くはない互いの距離。
一歩一歩彼が踏み出すごとに、言い知れない緊張感が増していく。
焦りに似た湧き上がる奇妙な衝動が、胸の辺りで静かにざわめく。
どうすれば。
どうすればいい。
どうすればいい。
彼の注意を、一瞬だけ。
一瞬、だけ。
突き進む影と、それを向かい待つ影。
その距離がゼロに向かってグッと縮まろうとした…。
その途端だった。