亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「チチチィ―――」
場違い、とはこのことだろうか。
本当に場違いな、脳天気で愉快な可愛らしい雛の鳴き声。
それは例えるならば、戦場のど真ん中で平和ボケしたカップルがシートを広げてランチを楽しんでいる様な。
例えるならば、遭難して皆が飢えに苦しむ中、やっと得られた食糧をその場で独りパリポリと極普通に食べる愚か者の存在の様な。
………とにかく、とにかくだ。
異常な程場違い、空気の読めないものが、常識という名の概念の厚い筈の壁を、『常識って何?』という最強の…もはや形容しがたい何かによっていとも容易く木っ端微塵にした。
正直な話、ここ小一時間忘れていた存在。
両手に収まるくらいの真っ黒な雛鳥、アルバス。
この雛鳥の突然の舞台出現、飛び込み参加は予想外にも、真横の雪の丘からだった。
積もりに積もった真っ白な丘の壁から、何の前触れも無くズボッ…とひたすら掘ってきたらしい穴から、雪を掻き分けて飛び出して来た。
ユノとレトが丘の上に登っていった時、どうやらついて来ていたらしい。
二人が降りて行った後、アルバスは運悪く底無し沼の如き雪の海に足を取られ、チチチチチ―…と鳴き足掻くも、誰にも気付かれる事無く沈んでいった。
………しかし、耐寒力に優れ、生命力も半端ではない怪鳥カーネリアンの性質が幸いしたのか、アルバスは逞しく雪の中をもがき、ようやく明るい外へ脱出する事が出来た。
………また、妙な時に。