亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



母親であるレトに会いたいがため、生還したアルバスだったが。

時と場所が、悪かった。
















飛び出して来たアルバスの小さな身体は、クルクルと回転しながら毬の様に軽やかに宙を飛び………。


















激しい殺気を露に、現在進行形でレトに突進していた少年の横っ面に………激突した。

………淡い黄色の小さいながら中々鋭い嘴が、彼のこめかみ辺りに刺さった。


「―――うぁっ…!?」


よく分からない衝撃を受けた少年は、地味に痛む顔の側面を押さえて一旦立ち止まった。



……罠か?それとも不意打ちか?

しかしそれにしては軽過ぎる。妙に弾力があったし、生き物の様に生温かった。そして何故かこめかみに地味に痛い傷が出来ている。

………結局、何が当たったのか分からないし、今起こった事態自体が何だったのかも分からないが、少年は再び殺意をレトに向けた。



………途端、彼の目に飛び込んで来たのは………濛々と立ち込める、濃い純白の煙だった。

狩人が狩りや退避する時などで使う煙幕の一種だ。
広範囲に広がり、しかも中々晴れない様になっている。


「小癪な真似を………!!」



獣相手ならこの煙幕は利くに違いないが、今は狩人同士の戦い。
こんな小手技、一瞬しか持たない。

少年は躊躇う事無く煙幕の中へ飛び込み、風の様に煙を吹き飛ばしていく。

本の一瞬の時間だ。すぐ近くにいる筈だ。
そう思い、鋭い眼光で煙以外の揺らめく影を探した。









………すぐさま、研ぎ澄まされた彼の五感が何かを捉えた。


……前方約三メートル向こうに、遠ざかる足音。
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