亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
足音のリズムからして、奴に違いない。
立ち込める煙の向こうに………白は白でも、雪や煙とは異なる白い影が、揺らめいているのが見えた。
………狩人のマントだ。
少年は、剣を構え、地を蹴った。
「はあああああ!!」
一瞬でその背中に走りより、血走った瞳で睨み付け………思い切り………刺した。
鋭利な剣先は吸い込まれる様に、見慣れたマントの厚い生地を貫き、深く、深く、めり込んだ。
………少年は、目を丸くした。
「―――………なっ………」
両手で握り締めた剣からは、肉や骨を断つ感触も、生暖かい血の温もりも、何も………伝わってはこなかった。
ただそこにあるのは、虚無だけ。
虚無に漂う………力無く、剣に絡み付いた………マント、だけ。
(………しまっ……)
マントは囮、という事実に気付いたのも束の間。
振り返ろうとした直前、後頭部に重い一撃が入った。
成す術も無く白い大地に倒れ込み、軽い脳震盪と後頭部の鈍痛を感じながら、なんとかして立ち上がろうと地に両手を突いた。
………だが。
「………災難だったね」
背後からの無感情の声と共に、まだ痛む後頭部にひんやりとしたものがピタリと当てられた。
マントの無い、薄手だが丈夫な白い皮服だけのレトが、いつの間にか弓を構え、氷の矢の先端を少年の頭に突き付けていた。