亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
本の少し弦を引く右手の力を緩めれば、矢は放たれ、少年の頭蓋骨を突破るだろう。

傍らに落ちている彼の剣を蹴飛ばし、レトは彼の後ろ姿をじっと見下ろした。


「………アルバスは悪気は無いんだ。…許してあげて。………でもまあ、戦闘中っていつ何が起きるか分からないし………これも時の運だよね………」

「………………うるさいっ!!………………生恥だ………早く殺せ!」

この状況、とてもじゃないが少年には耐えられないのだろう。
悔しそうに歯を食いしばりながらも、反撃してくる様子は無い。

「………勿論、そのつもりだけど。………………君に恨みは無いけど、それじゃあ……。…………………あ…」

………ふと、レトはある事を思い出した。首を傾げながら、目下の少年に再び口を開いた。















「………あのね、一つ訊きたいんだけど。…………………貴方、誰ですか?」

「ふんっ……!…敵を前にして質問とは余裕な事だな!いい気になるんじゃ………………………………………………………は…?」






………レトの何気無い質問は予想だにしていなかったのか。少年は、矢を突き付けられているにも関わらず、唖然とした顔で振り返ってきた。








「………いや…こんな時に冗談…」

「………誰ですか?」

「……あの………だからさ……」

「僕、なんか恨まれる様な事したんですか?………とりあえず、ごめんなさい…」

「………」

「―――」

「………」

「―――」


















………間が、生まれた。

一気に白熱した舞台のの温度が、急降下していく。







「…ちょっと待て」と少年は一旦立ち上がった。
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