亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
さっきまでの激しい乱闘の流れをぶった切り、レトもいそいそと弓を引っ込めた。
少年は両手を腰に添え、深い息を吐いてから、ちょっと気まずそうな顔でレトに向き直った。
「………………嘘やおふざけ無しで話し合おうじゃないか。………で………お前は、俺を覚えてない……だと?」
「………覚えてない……って事は、一度何処かでお会いしてるんですか?」
「…………………四年前に…」
「………僕、人の顔覚えるの苦手で……」
「………………それ、本気で言っているのか…?」
………段々と悲しげな表情を浮かべていく少年に、レトは無情にも無情な答えを述べていく。
戦闘放棄の挙げ句、向かい合いながら噛み合わない会話を始めた二人。
………なんだか不思議なそんな光景を、周りは無表情で眺めていた。
「………僕さ、毎回思うけど、狩人って不思議―。………殺し合いからどうしてこんな風に流れるんだろ―…」
少し呆れた口調でユノは言った。
サリッサも、ポカンとしたままだ。
ザイはザイで、二人の会話を聞きながら少年をじっと見詰めている。
………残念な事に、どうやら彼も、覚えが無い様だった。
………これでは、ただの馬鹿ではないか。
焦燥に駆られた少年は、少し吃りつつも己の言い分が正当であることを訴えようとした。
「………な、名前聞けばちょっとくらい思い出すかもしれないだろ!………………俺の名は…」
……と、自己紹介をしようとした瞬間、上空から長い剣が弧を描いて飛来し………まだ痛い筈の少年の後頭部に、柄の部分が直撃した。
………二回目の脳震盪を起こし、少年はレトの目の前でパタリと倒れた。