亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
この吹雪は間違いなく、その『嵐』に違いないが……聞いていたものより、大き過ぎる。
その『嵐』とやらが幾つも密集しているのか。そんなものが爆発すれば………突風、などという言葉では収まりきれない衝撃波が襲うだろう。
「………デカいのがくるやもしれんぞ……ジン…」
「………………はっ…」
まだ地味に痛い右目を押さえたまま、無感情な声でジンは答えた。
―――…フフッ…。
日が目線の高さまで傾いてきた頃だろうか。横に伸びる西日が差し込む室内は広々としていて、どこか薄暗く、どこか虚しい。
無機質な輝きを見せる金や銀に溢れた豪勢な部屋は、しんと静まり返っている。
生気の無い、虚無に塗れた空間。
……そこで聞こえてくるのは。
小さいが、やけに頭に響き渡る………男の楽しげな冷笑。
「………あの……ケインツェル様…」
フェンネルに赴いた使者が持ち帰って来た書状を側近のケインツェルに手渡してから、早五分。
文はさほど長くはなく、五分もかからない筈なのだが、それにも関わらず文面を舐める様に読み続け、挙げ句笑みを漏らし始めたこの上司。
………それ以上の反応も無く、またある気配も無く………とうとう痺れを切らした兵士は、時折肩を震わせて笑うその細身の背中に声を掛けた。
……直後、ケインツェルは兵士の方にゆっくりと振り返った。
……西日が、彼の眼鏡をキラリと照らす。
「………何かな、諸君」
後ろに控えていた数名の兵士等は、冷や汗をかく。