亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
何故か顔面蒼白の使者が持ち帰ってきたフェンネルからの書状。
したためたのは誰であるかは知らないが、フェンネル王の言葉であると受け取っても良いだろう。
その文頭はお決まりの社交辞令がつらつらと並び、その後の本題は………僅か二、三行と短かった。
臨時の伝言か何かと思える様な短文には、率直で、真っ直ぐな言葉があった。
並べられた、詩の様な王の言葉。
フェンネルの意思が、そこにはある。
仄かに香を焚かせた品の良い文の真ん中に、それははっきりと、あった。
“―――我が手に剣は無く、我が手に盾は無い。貴殿に曝す我が身。されども―――”
“―――我が身には瞑らぬ眼が有りし”
(………面白い…)
ケインツェルは不敵な笑みを浮かべた。
文の内容は、別に暗号でも何でも無い。その言葉通り、そのままの意味だ。
つまり……
…フェンネルは、バリアンに一切の敵意は無い。全くもって、無い。バリアンの前では、フェンネルは赤子同然。
されども………表も裏も、全てを見る……見据える眼だけは、私にはある。
………隠していても、全て………お見通しだ。
………この短文の中で、フェンネルはそう言っているのだ。
下手に出てはいるものの、決して屈しようとはしない、不敵な笑みを浮かべる若い女王様の顔が目に浮かぶ。
………なるほど。………こちらの計画は既に知られている、という訳だ。
……それが分かっていながら、フェンネルは大きな動きを取ろうとしない。
あくまで『友好関係』とやらを掲げていたいのだろうか。