狙われし王女と秘密の騎士


しかし、踏みとどまる私達にはお構いなしにカイルは宿に入っていく。
一階にいた店主らしき人に小さく手を挙げると、話が通っているのか知り合いなのか店主はわかっているように頭をさげる。
さらに奥に進み階段を上がっていく。
カイルのその姿は本当に……。


「慣れてる…?」


そう。その迷いない歩きは、まるでここは通いなれた場所という様子だ。
不思議に思ったがナリエル城下街はカイルの地元だ。何かしら事情があるのかもしれないと思った。

いくつか部屋の前を過ぎて、カイルは奥の部屋の前で足を止める。


「ここで人と会うことになっている」
「人?」


そんな話は初耳だ。
いつの間にそんな手配をしていたのか。疑問に思ったが、この国へ来ると決めてから一月近くたつ。それくらいはとっくにしていたのかもしれないと考えた。
カイルは私達をチラッと見てから扉をガチャリと開けた。

部屋の中は広々としていて、今まで泊まった宿のどれよりも高級感満載だった。
家具や装飾も落ち着いた雰囲気ではあるが、良いものと一目でわかる。

そして、部屋の中央にあるテーブルに肘をつき、椅子に腰掛けている人物がいた。



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