狙われし王女と秘密の騎士
部屋はそれぞれ一部屋ずつ与えられた。
ライが計らいでそうしてくれたのだという。
こんな高級宿に泊まることにさらにお頭は興奮し、また明日ナリエル国王に会えるという喜びから、ナリエルにいた仲間たちとさっさと飲みに出て行ってしまった。
私はというと。
部屋で風呂にゆっくり浸かりながら今までのことを振り返った。
国を追われ、人の優しさに触れ、王女として自分の未熟さや世間知らずを痛感した。
いつかはエルシールの女王となるべく教育されてきたが、私は知らないことが多かったのだ。
だからこそ、次はもっと国を国民を知りたい。
そしてもっと他国にも目を向けたい。
今まで出会った街の人々、大切な家臣や城の者たちが浮かぶ。
早く国を取り戻したい。
そして、明日を迎える前にやはりもうひとつの胸にあるつっかえを取るべきだと思った。
私は落ち着いてからある部屋の扉を緊張しながらそっと叩いた。
「カイル。居る?」
私はカイルの部屋をコンコンとノックすると小さく返事が聞こえたので、ユックリと扉を開ける。
カイルはリビングの奥の開けた窓から外を眺めていた。
「どうした」
扉の前で黙っていた私に振り返って無機質に聞いてくる。
その声に私はうつむきかげんだったのが、ますます下を向いた。
やはり、あの日からカイルは怒っているように思う。
「あの……」
「用があって来たんだろ?」
言いよどんでいるとカイルは促すように聞いてきた。
それに頷き、側まで歩み寄る。