狙われし王女と秘密の騎士
「もう怒ってないから。確かにあの時、お前は無鉄砲だったけどでももうとっくに怒ってはいない」
「でも冷たかった」
「それはお前に冷たくしたわけじゃなくて……。ナリエル国が近づいたらなんとなく口数が減っただけだ」
意外な返答に顔を上げて首を傾げる。
国が近づいたからといって、なぜ口数が減り表情が固くなるというのか。
意味がわからなかった。
「なんで?」
「それはっ……。……俺の事情」
カイルは初めてそこで目をそらした。
それ以上は話したくないというオーラが出ており、追及しにくい。
明らかに何か隠していると感じたが、今はカイルが怒っていないということが上回っていた。
安堵の方が大きい。
「じゃぁ、嫌いになってない?」
「なってないよ」
カイルは優しく微笑み、親指で私の涙を拭った。