狙われし王女と秘密の騎士


「顔を上げなさい」


低く、しかしよく通る声にユックリと顔上げる。
玉座にはガッチリとした体格の品と威厳を醸し出した中年の男性がユッタリと座っていた。
口髭がなければもう少し若く見えるであろう。

この人が、ナリエル国王。
この国を大きく発展させたやり手の国王だ。

その堂々とした佇まいはまさに大国の王の風格がある。
国王は私と目が合うと柔らかく微笑んだ。
そして、スッと隣に目線を移す。


「カイル。久しいな」


苦笑気味なその声は、カイルに対して砕けていた。
その声にカイルは頭を下げて一礼する。


「あまりにも戻りが遅いゆえ、行き倒れたと思ったぞ」
「残念ながら、まだぴんぴんしてます」
「くくっ。可愛くないのぅ」


国王は楽しそうに笑顔を見せた。
その表情は決して本当に行き倒れたとは思っていない、信頼していたとわかる顔だ。



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