狙われし王女と秘密の騎士


長い階段を上りきると、柔らかい心地好い風が私の頬を撫でた。
西の塔のてっぺんは私が一人になりたい時によく来る場所だ。

小さなそのスペースは日当たりもよく居心地がいい。
何より、と西の方角を見つめる。


「……何してるのかなぁ」


西の国を思い出す。
今、どこで何をしているのだろう。
また供を振り切ってひとりで旅でもしているのだろうか。
元気にしているだろうか。


「逢いたい……」


そう簡単に逢えないからこそ、余計にそう思ってしまう。
想いはつのる。
けれど、一国の第二王子と一国の次期女王。
そう簡単に逢えないし、ましてやこの気持ちなど持ってはいけないのだ。

それでも、一目逢いたい。

彼を思いだし、自然と再びため息をついた。

するとその時。


「ため息なんてついてどうかしたのか?」


背後から聞き覚えのある声がして、私は顔を上げて振り返る。


そこには……。








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