狙われし王女と秘密の騎士




「カイル…………?」



階段の入口に腕を組みながら薄く微笑む長身の男性。
柔らかな風で、茶色の髪がフワッとその整った顔にかかる。
忘れることのなかったその姿。
何度も夢に見た、その彼に呆然となる。
私は夢を見ているのか?


「カイル……? どうして」


そう言うだけで、それ以上声が出なかった。
どうしてカイルがここにいるのだろうか?
カイルが来るなんて聞いていなかった。
驚きすぎて固まる私に向かって、カイルはゆっくりと歩いてくる。
そして、目の前まで来るとにっこり微笑んだ。


「驚いた?」
「うん。え、何で? どうしてここにいるの?」
「……まぁ、ちょっと用があって。シュリは? 何してんの、ここで。元気だった?」


“シュリ”と呼ぶ声に懐かしさを感じる。
ずっと呼ばれたかった声に背中が震えた。


「私は……その」
「……縁談があったって聞いたけど?」
「知ってるの!?」


驚いて声を上げる。
カイルが知ってるなんて ……。
なんだか知られたくなかった。



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